【医療通訳の現場から】世界をリードするがん治療技術
日本が世界をリードする医療技術の一つ、「重粒子線治療」をご存知でしょうか。
放射線治療の一種で、特定の部位に留まっている固形がんに対して非常に高い効果を発揮します。その精度の高さから、現在は国内のみならず、海外からも多くの患者様がこの治療を求めて来日されています。
先日、弊社ではアメリカ人女性の医療通訳を担当いたしました。治療の第一歩は、日本の専門医による初診から始まります。病状を詳細に分析し、重粒子線治療の適応となるかを見極める重要なプロセスです。
治療が決まると、患者様は詳細な説明を受け、インフォームド・コンセントに署名します。その後、照射線量や回数といった具体的なプランが提示され、体をおなじ位置に固定するための専用固定具の作成や、CTシミュレーションへと進みます。
今回のケースで印象的だったのは、日本のきめ細やかな疼痛管理です。患者様はがんの強い痛みに苦しみ、母国では1種類の鎮痛剤を数時間毎に服用されていました。日本では、2種類の薬をベースラインとして整え、必要に応じて頓服を追加する処方に切り替えたことで、より安定した状態で治療に臨むことができました。
数週間にわたる治療は、週4回のペースで実施。照射は上方や斜めなど多方向から行われますが、斜めからの照射時に「エネルギーを感じる」との患者様の言葉に、治療のリアルな実感がこもっていました。
通訳の役割は、週1回の医師による診察、固定具作成の現場、そして治療室での看護師や放射線技師とのやり取りまで多岐にわたります。特に対象が重度のがんである場合、予期せぬ体調の変化が起こることも少なくありません。その一瞬一瞬の変化を正確に医師に伝え、「言葉の壁」を取り払うことで、患者様が安心して最先端の医療を受けられるようサポートを続けました。
